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今日も、夏です。

常夏シンガポールで送る日々の記録

フォルトラインを見た



ハーバード大教授も認める「楽天の英語公用化は大成功だ!」:日経ビジネスオンライン

楽天が本当に成功したのかどうかはさておき…



言語によるフォルトラインという言葉をはじめて目にしたとき、以前働いていた会社を思い出しました。


その日系の会社がうまくいかなくなった主要な原因の一つに、言語による社員間の亀裂があるのではと思っています。



それは小さな会社で、日本人経営者の下で日本人、シンガポーリアンを初めインドネシア、フィリピン、中国、インドなどなど、様々な国から集まった人たちが働いていました。

私が入った頃は、会社の雰囲気はとても良く学生のノリみたいではあるがみんな仲良くやってるなと思いました。


経営者をはじめ一部の日本人は英語がかなり苦手でしたが、日本語が得意なシンガポーリアンが数名いて彼らが橋渡し役になっていました。



キーマンの入社〜社内日本人村の形成

私が入社してからまもなくして、ひとりの若い日本人が入ってきました。彼は前職が有名企業だったとかで経営者から期待されていました。

その彼は非常に社交的でしたが、英語をほぼ話すことができず現地雇用者(シンガポール人及び周辺国出身者を含む)との間のコミュニケーションが非常に困難でした。そして不幸にも日本式コミュニケーションのかたまりのような人でした。

  • タバコは必ず上層部の日本人と。
  • 飲みニケーション大好き。ただし日本人、女の子しか誘わない。
  • ランチは日本人を誘ってレストランへ。現地雇用者が行くフードコートへは行かない。
ランチは食の好みがあるのでどうしようもないところですが。



彼の引力に巻きこまれた日本人達一群を日本人目線でみると

「外国で団結する仲のいい日本人同僚たち」

まあほほえましいね、ですみますが、現地雇用者からみるとどうでしょう。今まで仲良くしていた日本人たちを囲い込むような印象を受けます。


日本人+日本語がわかる組と日本語がわからない組の境界ラインがハッキリとひかれていきました。

この頃実際に日本人と日本語のわかる人だけの飲み会なんていうのもありました。




通訳の導入

英語が苦手な日本人が増えてきたことを理由に、会社は通訳を導入します。


ここ、私は疑問に思います。



本当に通訳を入れるべきだったのか。



通訳を入れたことで、英語の苦手な日本人が

「英語をしゃべれなくてもまあいいや」

と思うようになったのでは?



ちなみに通訳として入ってきた女の子は日本人組に組み込まれ、もとからいた日本語が得意なシンガポーリアンたちのような橋渡し役にはなりませんでした。




橋渡し役の離脱

会社もいろいろごたごたあったようで、幹部の更迭、日本人社員を含む数名の解雇などがあり、雲行きが怪しくなってきたところに追い打ちをかけるように、今まで橋渡し役だった日本語の得意な二人のシンガポーリアンが相次いで離職、休職することに。


この話を聞いたとき、これはやばいことになる、と感じました。



経営者周辺が把握していたかどうかは分かりませんが、現場レベルには重大な火種があったのです。


例の日本人の彼が持ち込んだ方針を、現地雇用者たちは快く思っていませんでした


彼は経営者との距離が近く信頼されていたため、当時会社は彼の言う方向へすすんでいましたが、その方針は現場の支持を得ていませんでした。


現地雇用者達の不満は高まり、上層部と現地雇用者の心の距離はかなり離れていたのです。


そこへきて橋渡し役の離脱。





もう止まらない連鎖

会社の雰囲気が悪くなるとまず嫌気がさしたシンガポーリアンや永住者からいなくなります。

シンガポールは転職文化です。頻繁に転職してもデメリットはありません。つまり、不満があればシンガポーリアンはさっさと辞めてしまいます。


ここから雪崩のはじまりです。


シンガポーリアンを一定数キープできなければ外国人労働者就労ビザはおりません。ビザの更新もできなくなります。


シンガポールにはインド人やインドネシア人など優秀で安い人材がたくさんいます。しかし彼らを得るにはシンガポーリアンを雇う必要があるのです。時はちょうどSPassの審査が厳しくなった時期で、一部外国人従業員のビザの更新が出来なくなりました。


結局、シンガポーリアンの離脱が始まってから一年程でその会社はクローズすることになりました。




本音を聞いたら予想以上だった

私はその会社の最期までは見届けませんでした。

会社を離れるとき現地雇用者の数名と食事をしていると例の日本人の「彼」の話になりました。

それまでその彼について話をしたことはなかったので、なんでそんな話題になるのかと思っていたら、彼らが本音を話しはじめました。


「以前は日本人も現地雇用者も分け隔てなく一緒にランチを食べたり仲良くやっていたのに、彼が来てから日本人と自分たちの間に溝が出来てしまった。

彼は日本人と現地雇用者の間に壁を作るような存在で、たいして能力がないくせにボスに取り込むのだけはとても上手。みんな彼のことが大嫌い。」


…正直そこまで嫌われ者だったとは知りませんでした。聞けばけっこうな範囲の人たちから隠語のあだ名まで付けられて呼ばれていたという始末。




確かに彼はひどかった。


会社を辞める直前一度だけ彼の開いたミーティングに参加しましたが、日本人と現地雇用者が出席する会議を日本語で進めてしまう(通訳も待たずに)という信じられないことをやっていました。


もちろん彼一人が会社を崩壊させたわけではないですが、大きな要因になったことは事実です。


とはいえ結局のところは、一番の問題は経営者の意識だったのでしょう。そもそも経営者も英語が苦手で通訳がいないとコミュニケーションが取れなかったし、シンガポーリアンが離れていっても「日本人魂のガッツでなんとか!」と考えているのではないかとたびたび感じることがありました。



シンガポールではライフワークバランスが重要視されます。残業ありきでガッツでなんとかという日本企業に典型的な考えは嫌われることが多く、日本大好きなオタクでない限りいい人材は居着きません。



この会社で学んだことは、

シンガポーリアンの心を掴まない限り、シンガポールで会社を継続させるのは困難

ということでした。




言語によるフォルトラインは無くならないが、コントロールはできる

シンガポールには実に様々な国から労働者が集まってきます。しかしやはり同じ国から来た人達がいたら仲が良くなることが多いのは自然な流れです。



ランチタイムを観察してみると、日本人と中国人は同郷同士かたまって行動する傾向が非常に強いです。で、だいたいこのグループの中には英語の苦手な人がいます。


シンガポールの近隣国、インドネシア人やマレーシア人、フィリピン人は数が多すぎるせいかあまり固まるイメージはありません。というかこのレベルになるとシンガポール在住歴がすごく長かったり、中華系マレーシア人、中華系インドネシア人とかもいて誰がどこの国出身なのかイマイチよくわからないのが現状…。


それからインド人もかたまらないような印象があります。あくまでも私個人の印象ですが。

インドはローカル言語が多様すぎて、インド人同士の夫婦でも言葉が通じないことが多いんだとか。私の同僚のインド人はインド人の奥さんと英語で会話しているそうです。こういうことも少なからず影響しているのかも。




いまいる会社はローカルを含め中国語を母語とする人が一番多いですがその次は国籍を問わずフランス語を喋る人たちが多く、確かにフランス語グループも存在します。

しかし、「社内公用語は英語」とフランス人のトップが明言していることもあり、英語以外の言葉で話が進んでいってしまうことは決してありません。




もともとシンガポールは従業員の多様性が高く、フォルトラインはコントロールしやすい恵まれた環境なのではないでしょうか。もし社内で何らかのフォルトラインが問題になるようであればマネジメントに問題がありそうな気がします。